One Octave

目指すは「unique」な音色。大切なのは日常。                                               

夢か、現か

忘れていた言葉があった。

私は、夢を見た。

大阪へと帰るタクシーに私は乗っていた。
窓から見えるその景色は、何度も見た那覇の街並みだった。

運転手は、ゆっくり空港へと車を走らせる。

運転手が、ミラー越しに私を一瞥するのを感じた。
目が合ったその時から、運転手は島のおじさんへ変化(げ)した。

おじさんは、生粋の島んちゅらしい。
振り返ると、沖縄返還が大きな転機だったと云う。

返還前後で、那覇は 海は、大きく変わってしまった。

返還されたことは、日本にとっては大きな一歩だと思うけれど、
沖縄の海や街にとってはどうなんだろう。

ビルがどんどん建ち並び、空はどんどん狭くなってゆく。
那覇にいたクマノミたちは、いつしか消えてしまった。

空港を越える大橋の下を流れる川も、昔は皆泳いでいたと云う。
学校から帰って、皆海へ潜りどこまでも透き通る水中で魚を観察した。

沖縄本島は昔、アメリカ兵の避暑地だった。

置物を作るだけのために、珊瑚は遠慮なく採られていた。
珊瑚は生きているなんて思いもしなかった。

今、日本の一部になった那覇の海に、珊瑚は消えつつある。
(消えてゆかないよう、努力は日々されているけれど。)

おじさんは昔、宮古の海を見てその美しさに感動したそうだ。
でも宮古に住み続ける島んちゅは、首を縦には振らない。

島んちゅたちは、もっと美しかった宮古の海を知っているから。
そうは感じられないのだ。

那覇の島んちゅも、今の那覇の海を見てそう感じるように。

10年近く前に撮った沖縄の海。
一瞬で、その海の碧さの虜になった。
同じ場所に立って沖縄の海を眺めた私は、今ならどんな気持ちになるだろう。
夢か、現か_b0088089_23324063.jpg

その海を見ようと海へ視線を落とした瞬間、夢から覚めた。
私は、はっとした。
怖いくらいの既視感を憶えた。

どこかで誰かに語られた記憶がある気がした。
万座毛から海を眺める、自分の感覚が確かに在った。

これは、夢なのか現(うつつ)なのか。
どちらなのか区別がつかないほど、リアルで夢のような。
そんな目覚めの朝だった。
by black-dolphin | 2009-09-01 23:32 | 和の話

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