One Octave

目指すは「unique」な音色。大切なのは日常。                                               

点と線

それは確実に、誰かが私に教えてくれた点だった。

あの日あの時間、私は海の近くに居た。
延々と警報が響いていた。

私には、まるで実感がなかった。そこからは、海が見えなかった。

大阪へと帰るバスの中、ラジオから聴こえた情報に少しの心配が生まれた。
家に帰ると、信じがたい映像が延々と流れていた。
朝まで私は、その映像から眼を離すことが出来なかった。

散りばめられた点々が、いっぺんにつながった。
辛く厳しい現実を知った。

道ばたですれ違う誰かを見ても、確かに感じた。
みんなどこかに、私と同じ感情を以っているだろうと。

生まれてはじめての感覚だった。
哀しいかな、皆と繋がっている感覚を絶対に感じた。
点と線_b0088089_18574968.jpg

この8ヶ月間、私はある存在のことだけを思い続けた。延々と。
深い深い暗闇で、しゃがみ込んでいた。ずっと。
記憶が色褪せかけたころ、それは再び押し寄せた。色濃く波のように。
立ち上がって、歩き出さなきゃ。でもそれにも増して離れ難かった。

ひとりぼっちになる寂しさ恐怖
誰に対するものか判らない嘆き
ただただ溢れる涙
途方もない無力感

楽しく幸せだったこと辛く苦しかったことが、とめどなく脳裏に映る。
遺影や記憶の前で、ただただ胸がぎゅうぎゅう締め付けられる。
ストックのドックフードが空っぽになった日、終わりを感じた。
何もかもが色褪せて、自分こそが罪だと感じた。

旅をしても
海を潜っても
美味しいものを食べても
あったかいお風呂に入っても
空を見上げても

幸せを感じない。

祈るなんてできなかった。
祈ることって何だかわからなくなった。
初花が離れていかないように、私は抱き締め続けた。

そんな時、遠くからあの声がした。
それで私は、ようやくちゃんと見上げた。
それは辛く厳しい現実だけど、私を暗闇から引きずり出した。

これまで生きてきた中で、一番尊いものを失った“いたみ”をちゃんと知った存在として。

だから私は想像を遥かに超えて、反応し感じられた。
私はあの人たちやあの存在に、恩返しをしなきゃならない。

時間は流れてゆく。
本当に不思議な流れにのってゆく。
by black-dolphin | 2011-04-04 23:58 | 和の話

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